【対談】ミラノ東京 ひきこもりダイアローグ 第4回


(写真:ゆーき(東京)/ ShenXin (ミラノ))

<対談者プロフィール>

マルコ・クレパルディ (Marco Crepaldi)
イタリア・ミラノに住む若い社会心理学者。イタリアにおけるひきこもりの増加に対応するべく、イタリア版「ひきこもり新聞」ともいうべきウェブサイト「Hikikomori Italia」を立ち上げ、イタリア国内約170のひきこもり家族の連絡会を主宰している。本紙「ひきこもりは何であり、何ではないか」(日本語版)も参照のこと。

ぼそっと池井多 (Vosot Ikeida)
日本・東京に住む中高年のひきこもり当事者。ひきこもり歴は断続的に30年以上。詳しい履歴については本紙「ひきこもり放浪記」を参照のこと。なお、この対談における発言は、あくまでもぼそっと池井多個人のものであり、本紙「ひきこもり新聞」を代表する意見ではない。

ミラノ東京ひきこもりダイアローグ 第3回」からのつづき・・・

マルコ・クレパルディ:
なぜ「ひきこもり新聞」も「居場所」だと、あなたは言うのですか?

ぼそっと池井多:
なぜならば、ふだん私たちはそれぞれ自分の部屋で記事を書いたり、画像を加工したりしているわけですが、インターネットを通じてお互いの仕事を交換し、「編集会議」でときどき集まって、じかに顔を合わせます。

この集まりは、私たちがひきこもりたちの声を新聞として発信するという共通のタスクがなければ、定期的に行われないことかもしれません。めったに外出しない私などは、毎回この「編集会議」を楽しみにしています。それは、単なる集まりや飲み会などとは、また違った感覚をもたらしてくれます。

何かやることがある、ということが、存在に正当性を持たせてくれ、私たちは参加しているときに、そこが居場所である感覚を与えてくれるのでしょう。ところが一方では、一般の会社とちがって、誰もそこでは働けとは強制されません。良くも悪くも、私たちの新聞発行は、まだビジネスと呼ぶには規模が小さいからでしょう。こうして、ひきこもりは編集会議にただ「居る」ことが許されるのです。

マルコ・クレパルディ:
なかなか良さそうですね。
しかし居場所メソッドは、ひきこもり対策にけっして万能ではないでしょう?

ぼそっと池井多:
おっしゃるとおりです。
たとえば、ガッツリひきこもっている人は、もっとも近い居場所に出てくることすらできないでしょう。また、近くの居場所には、会いたくない別のひきこもりが来ているから、その居場所へ行けなくなってしまっているというひきこもりもいます。

落ち着ける居場所を求めてあちこちの居場所をわたりあるく、「居場所ジプシー」と呼ばれる段階もあります。ここでジプシーとは、「さすらう人」という意味であって、なんら民族的な差別の意味を含みません。

さらに地方へ行くと、もっとも近い居場所へ行くだけで半日かかってしまい、日常社会よりもはるかに外へ、遠くへ行く小旅行になっている場合もあると聞いています。

つまるところ、居場所はないよりもあった方がいい、ぐらいに考えておくのがよいのでしょう。過剰な期待は逆効果をもたらします。

あなたはいったいなんでまた藤里町の例に、そんなに興味があるのですか?

マルコ・クレパルディ:
なぜなら、ひきこもりを助ける唯一の道は、ひきこもりが住んでいる共同体ごと援けることだと私は考えているからです。藤里町は、ひきこもりは個人の問題ではなく、社会の問題だと証明したのです。それが私の基本的な考え方です。

ぼそっと池井多:
なるほどね。しかし、あなたのおっしゃっている観点を踏まえたうえで、私たちは、ひきこもりであることがもはや問題ではないような社会をつくるということを目指さなくてはいけないと思うんですよ。
ひきこもりは、たくさんある生き方やライフスタイルのうちの一つにすぎないのであって、他人からとやかく言われる問題ではない、と。

マルコ・クレパルディ:
完全に賛成ですね。
私は、生き方やライフスタイルに関する選択のために誰かを非難するということはしません。しかし、同時にそういう選択をする人は、他の人々の生活もまた尊重しなければならないと思います。

たとえば、私自身もひきこもりになるかもしれない、しかし両親の収入に頼ってはいけない。私は、私の選択においてひきこもりになるのだから、収入源は自分で整備しなければいけないと思います。

それと同時に、もし誰かがひきこもりの状態を脱しようとしているならば、私はこれを助けるべきだと思います。しかし、脱するという選択自体は、ひきこもり自身が決めなくてはいけない。

この点においては、あなたは賛成してくれますか。

ぼそっと池井多:
賛成しましょう。
もし、ひきこもりがひきこもりの状態から脱したいと願っているなら、誰かがその脱出を手伝うことは同意できることである、と。

…「ミラノ東京 ひきこもりダイアローグ 第5回」へつづく

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