「ひきこもり問題が、医療と福祉のはざまだから起きたこと」弁護士・望月宣武氏の発言 引き出し業者被害 記者会見【全文】


2017年5月22日 開催
記者会見
「ひきこもり自立支援を謳う団体による被害実態について」

2017年5月22日 開催 記者会見「ひきこもり自立支援を謳う団体による被害実態について」(全記事リンク)

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同記者会見における被害者Aさんの主任弁護士、望月宣武氏の会見内容。

望月弁護士:
今日はお集まりいただきましてありがとうございます。弁護士の望月と申します。
先月になりますが、平成29年の4月21日にAさんとお母様が原告となって、ひきこもり支援を謳う業者を提訴いたしました。

570万支払い、支援もなく軟禁状態に

提訴した相手方は業者そのものと業者の代表者、それから職員2名。職員2名に関してはこの業者の設立メンバーと聴いております。

いわゆる経営幹部のような位置付けだと思いますが、合計で法人1名、自然人3名の四者を被告として訴えました。
お母様が原告になっている理由は、ひきこもり支援を謳う業者と契約をしたのがお母様であり、「ひきこもり支援業者」に570万円余りのお金を支払っているためで、その返還を求めております。

そしてAさんご自身からは、ひきこもり支援を謳いながら実際には何ら支援を受けないまま、3ヶ月余りに渡って軟禁に近い形の生活を強いられていたことの肉体的、精神的な苦痛に対しての損害賠償を請求しております。

この事件のポイントですが、実際にお母様が業者に相談し、Aさんご自身を住んでいる家から連れ出し、支援業者の施設と呼ぶような場所に連れて行って、そこで生活させていた。その生活の中で起きた細かい事実に関しては、後でAさんご自身からお話いただけると思います。

実際に連れて行く時には、私たちの主観で言えば、それは拉致のようなもの、強制的な連れ去りだと思っております。また支援業者における生活は監禁に近いものだと思います。監禁というのも、檻に閉じ込めて鍵をかけるような監禁も、もちろんありますけど、精神的な脅迫で、逃げてもどうにもならない、誰も助けてくれないという絶望感から、精神的に逃亡する意欲を奪うことでも監禁は成立いたします。

Aさんの場合は物理的な監禁では無いにせよ、逃亡を諦めさせるような状況に追い込んだ点で、私たちはそれを監禁だと考えております。その監禁生活の中においては、実際には暴力的な行為もありました。

訴訟においてはそのような拉致、監禁、暴力について、一つ一つ立証していくことは大変な困難が伴います。何故ならばビデオカメラが設置されていたわけでは無いので、その具体的な状況を誰も記録出来ていないわけです。そして当然、業者はそのような事をやっていないと反論するでしょう。私たちはそれを証明することは、ややハードルを抱えています。

ただ、この裁判において主要な争点になると考えていることは、570万円という多額なお金を支払わせておきながら、それに見合う支援が何ら為されていない。ここが問題だと思っていますし、ここが争点になって来ると思っています。

ひきこもり支援という、福祉と医療のはざま

ぜひメディアの皆さまにも気をつけていただきたい、認識していただきたいのは、私たちはひきこもり支援業者の拉致、暴力、監禁、そういった事を訴えたいのでは無いのです。
多額のお金を払わせておきながら何ら支援と呼べないような事をしている、支援と呼べる実態が無いことが問題なのです。

お母様からの570万円の請求は、支援が受けられると思って契約したにも関わらず、十分な支援が受けられていないという意味で、債務不履行による責任を問うています。またAさんに関して言えば、そうした支援の必要が無かった。Aさんはひきこもりであったわけでも何でも無いにも関わらず、Aさんの真の同意を得ることも無いまま、支援とは呼べない生活を3ヶ月にも渡って強いていた。このことが問題と思います。

より抽象的な点を申し上げますと、このようなひきこもりの問題は医療と福祉のはざまの中で起きています。医療の対象にもならない、福祉の対象にもならないからこそ、このような業者が多額の報酬を請求できる温床となっているわけです。
医療でしたら、点数による診療報酬に基づいた金額が決まっているわけですし、福祉であってもそのような業者が自由に値段設定できる世界では無いわけですね。ただ、ひきこもり支援という福祉と医療のはざまだからこそ、このような多額の報酬が、実際にまかり通ってしまうという事です。

今日はAさんの個別の事案を発表するわけですけれど、この業者自体を糾弾することが目的ではございません。この一つの事例をサンプルにして、医療と福祉のはざまで起きている問題について世間に訴えたいと思っています。

このAさんの事案に関しては、2つの特殊な事情がございます。一つは、Aさん自身がひきこもりでは無かったということ。それにも関わらず、ひきこもり支援の枠組みに強制的にはめこまれてしまった。

被害拡大に警察が加担

もう一つは、今日の会見の本質とややずれるのかも知れませんが、実はAさんの3ヶ月に渡る監禁生活の被害拡大に、警察が加担しています。
Aさんが警察に助けを求めたにも関わらず、結果的には警察が何も守ってくれなくて、施設に戻るように強いた。その事でAさんの絶望感がより深まり、誰も助けてくれないという絶望によって、より逃亡、脱出が困難になったという事情があります。そういった警察の無理解も実際にはあります。

この後、具体的なお話がAさんと、Aさんのお父さんからありますけれど、ひきこもりの問題というものを、より社会に広く認識してほしいと願って、今日の会見に至っております。私からは以上です。

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