【完全版】思いを受け止める場を「ひきこもる女性たち」著者池上正樹氏インタビュー


思いを受け止めてもらえる場へ

ただ、せっかく女性が勇気を出して当事者会を訪ねてみても、男性の割合が多くて怖くなり、行くのをやめてしまったという話もよく聞きます。
同じように苦しんでいる状況の仲間を作るには、まずは女性同士のほうが安心です。
そこで、最近は、女子限定のひきこもり当事者会も、少しずつですが増えてきました。
ひきこもりUX会議が主催して2016年から始めた女子会には、すでに80人を超える参加者が集まっているそうです。
それだけニーズがあるという証左でしょうね。東京都板橋区では、区の職員が運営する「ひきこもり女子会」も運営されています。
兵庫県宝塚市でも、地域支援する臨床心理士たちによる「大人のひきこもり女子会」、京都府宇治市でも「こころのはな」というNPOが主催してUXメンバーが運営する女子会がそれぞれ始まりました。
まずは思いを受け止めてもらえる相手を見つけることで、次の展開があるということです。上下関係ではなくて、みんな違うのでそれぞれの目的に応じた関係性を構築していく。
周囲はそのサポートをする。やはり出会いなんですよね。人は安心できる人と出会えると変わっていきます。
出会いによって想像もできなかったくらい、ものすごいスピードで人生が変わったケースもあります。
安心できる人は人それぞれだと思いますので、それぞれにとって安心できる相手や場があると思います。
いろいろな目的に応じたコミュニティの場づくりを周囲の人たちは作ってほしいですね。

―居場所にも行けない純粋ひきこもりの場合はどうですか?

 

当事者たちが「ひきこもり大学」という活動を始めた頃、そのときの模様を紹介したら、ひきこもっているという女性の方から「私は行けないけど、希望を感じています」というメールを頂きました。
その方は、やがて1年くらい経ってから、一生懸命、私に道を聞きながら会場近くまで来てくださり、そのときは体調が悪くなって帰られましたけど、何回目かで会場に入ることができました。

行ける場所がある

開催しているという事実を伝え続けるだけでも、その情報を知って、自らの強い意思で実際に出てこられるようになった方を何人も見てきました。
そういう動きが始まったんだ。じゃあ、私も何かできるかもしれないと、自分が持っている潜在的な可能性を感じて、動き出す。
役割とか意義とか自分にもあると分かった、という声もよく聞きます。
行こうかどうしようか迷いながら、1年、2年かけて来られる方も多いです。だから、1回で終わるのではなく、継続することが大事だと思います。

―家族はどんなふうに接すればいいですか?

家族は難しいですね。特に女性は、ことごとくと言っていいほど、壊れている家庭で育っていることが多いからです。しいて言えば、家族は勉強してほしいですね。
家族が知ること、理解に努めることで、本人には何も言ってないのに変わってくることもあるみたいです。
こうするああするといったマニュアル的なゴールを決めた対応ではなく、どうして心を病んでしまったのかとか、それらを経験者から聞くことですね。

答えは本人の中に

みんな答えを求めていますけど、答えはそれぞれ本人の中にありますし、それを分かるのって同じように苦しんできた経験者なんです。だとしたら、たくさんの経験者からたくさん話を聞くしかないと思うんですよ。当事者が発信するニュースや情報をどうやって入手するかなんですけど、これはまさにひきこもり新聞ですね(笑)

―女性たちに、男性当事者はどのように接していったらよいと思いますか?

女性当事者の中には、誘われると断れない人もいます。でも、男性を怖がっていたり、断ったら悪いのではないかと思っていたり、硬直して話せなかったりする人もいます。例えば、居場所などで、ひたすら話しかける人がいると、後でドッと疲れて、もうあそこは行きたくないとなっちゃう。安心の場が確保できるよう気遣いながら、できれば聞き上手になってあげてほしいと思います。
(インタビュアー・土橋・佐藤・宇野・成瀬・石崎・木村)

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