【完全版】思いを受け止める場を「ひきこもる女性たち」著者池上正樹氏インタビュー


 

見えにくい主婦層

実際、結婚していても、子どもがいても、ひきこもる人はいます。主婦だけでなく、母親がひきこもっているという相談もあります。
夫や家族以外との関係性が途絶え、社会に障壁を感じる本質的なメカニズムは、その他のひきこもり状態の人たちとほとんど変わりません。

はじかれると行くところがなくなる

女性たちはコミュニティがあるといわれますが、実際は一度そこからはじかれてしまうと、いじめの構図じゃないですけど、行くところがなくなってしまいます。
例えば、結婚すると、女性のほうが男性の都合によって仕事を辞め、自分が思い描いてきた人生の夢や目標もあきらめざるを得なくなることに思い悩む。
「公園デビュー」に失敗し、同じくらいの年齢の子どもを持ったママ友集団が怖くなる。夫の転勤で見知らぬ土地に付いて行って誰も友人がいなくなってしまったりとか、海外赴任先の日本人コミュニティで疎外され、怖くて外出できなくなったりとか、そういうきっかけでひきこもり状態に陥ることもあります。
社会の側からも家族の側からも、一人の人間としての生きがいというものを認めてもらえない社会通念が、ひきこもらざるを得ない人たちの障壁と通じるところがあります。

―今、困っている女性のひきこもりの方へアドバイスや、周囲ができるサポートがあれば教えていただけませんか?

一部の専門家たちは「結婚すれば、ひきこもりは解決するなどと言ってきましたが、必ずしもそうとは言い切れません。
もちろん、自分の思いを受け止めてくれる存在ができたことで、解決に向かう人もいます。一方で、延長線上でがんばって結婚ごっこをしていて、旦那が家を出て行くとドッと疲れてずっと寝込んでいるとか、旦那が外出している間は部屋を暗くして物音にびくびくしながらじっと耐えているような主婦もいます。
元々、ひきこもる要因がそれぞれあるはずなんですが、結婚したからといって、そこの本質部分が解決することはないように思います。ただ、旦那さんが妻のつらさや痛みに理解しようと、丁寧に気持ちを受け止め、一緒に乗り越えようと向き合ってくれるような相手であれば、次の展開へと動き出せるかもしれません。
だから情報を入手することがまず一つですね。何となくよさそうだなと思ったら出かけてみて、それができたら、つながりを作っておくことです。
最近、当事者たちの自らの意思によって、ひきこもり当事者会が各地に生まれつつあります。
既存の雇用があまり期待できない中、同じような障壁を抱えた人たち同士が出会って、つながりを作ることは、これからお互いに支え合って生きていくために、とても重要な作業です。
「それで、いいんだよ」「大丈夫」と言って認めてくれる仲間の存在は、道のない未来へ、1歩ずつ前に踏み出していく上で、大きな後押しになってエネルギーを注入してくれるでしょう。

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