誰もが希望をもてる社会をめざして「KHJ全国大会in山形」レポート


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(会場の様子)

誰もが希望をもてる社会をめざして「KHJ全国大会in山形」レポート

「できなくてもとにかくほめる」
「加点社会」という言葉を聞いたことはあるだろうか。2016年9月18日から2日間にわたって開催された「KHJ全国大会in山形」での一コマだ。

KHJ全国大会とは、ひきこもり親の会の全国組織である「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が1年に1回開催しているKHJの中心的なイベントだ。今年は山形県米沢市の伝国の杜置賜文化ホールで開催された。上杉家ゆかりの地だ。

「誰もが希望をもてる社会をめざして」をテーマに、誰もが社会から排除されない、ひきこもり問題を入り口としてさまざまな社会問題を考えるきっかけになることを目指している。

本記事では講演された先生方の基調講演を中心にお伝えしていく。

 

減点社会から加点社会へ

一人目の講演は、文部科学省「不登校問題に関する調査研究協力者会議」座長でもあり、愛知県出身、大阪市立大学名誉教授、森田洋司氏による「不登校やいじめ、ひきこもりのない社会をめざして」

お堅いテーマにもかかわらず、関西弁での世間話をはさみつつ、気さくな近所のオヤジさんといった人柄か、講演は終始楽しげなムードで進んでいった。

講演は、いじめの原因から始まり不登校の現状と解決の考え方が主だが、不登校とひきこもりは共通するところがある。いくつかのポイントをあげる。

 

・いじめの原因は個人ではなく組織にあり、メンバーが影響力の差を悪用することで知らず知らずのうちにおこる。

・いじめは子供も大人も直面する現実の社会の解決課題。(パワハラ等)

・介入が必要な場合、親や教員が連携し、いかに気づくか。

・いじめを減らすには、子どもたち自身の自律性が必要。(栃木県小山市の「大人宣言」を参考)

・減点社会から加点社会への転換をし、子どもが他人との比較をせず自信を持てるようになり、いかに社会全体を成熟させていくか。

 

減点社会と加点社会とは、できて当然(100%)を基準とする社会か、できなくて当然(0%)を基準とする社会かの違いだ。

減点社会の日本と、加点社会のアメリカを例にとり説明があった。

アメリカの生徒指導ではリストを作り、生徒の良い部分を18個、最後に1つだけ課題をあげフォローしてゆく。

いっぽう日本では、満点100点のテストが99点でも残り1点のケアレスミスに注目する。99点なら十分に思えるが、減点社会では他の人と比較してしまうことで、本人の誇りと自信が得られない。

いじめをなくすためには、子どもの自律性を育て、成熟した社会を目指すことが必要だ。そのために、地域・家庭・学校で組織的に教職員を支える必要がある。

いじめは集団ができればおこりうることだ。大人を始めとして、減点社会から加点社会へと意識を変えていくことが必要ではないか。森田氏ですら、嫉妬など思わずいじめにつながりかねない感情が生まれたとき、どこで気づいてやめるかを意識しているそうだ。

この講演を聞いて、筆者も自分自身が話すとき、周りの話を聞くときに、「減点しているか」か「加点しているか」を意識するようになった。