喜久井ヤシン詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』


≪お知らせ≫
不登校・ひきこもり経験者の喜久井ヤシンさんが、詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』を発表しました。

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書籍情報
題名:ぼくはまなざしで自分を研いだ(ぼくはまなざしでじぶんをといだ)
著者:喜久井ヤシン(きくいやしん)
制作:子ども若者表現応援基金助成(https://hyogen.thyme.jp/
ページ数:132p
サイズ: 12.8 × 18.2 × 1.0 ㎝
※本書は子ども若者表現応援基金の助成により制作されました。通常の書店でのお取り扱いはありません。

概要
「ひきこもり新聞」、「ひきポス」、「不登校新聞」などの専門メディアで当事者手記を発表してきたライターが詩集を発表。渾身の詩35編に加え、アフォリズムなども掲載したボリューム満点の一冊。さらに特典として、引きこもり文学大賞入賞の小説「僕は産まれてから堕ろされた」を収録している。

※子ども・若者のための居場所(オルタナティブ・スクールやひきこもり当事者のための活動団体など)を運営している方からのご希望があれば、詩集一冊を無料で配送いたします。
連絡先 natanaeru87@gmail.com
配送条件・購入方法など、詳細は以下のページに記載しております。なお、条件によってはお送りできない場合がございますのでご了承ください。
喜久井ヤシン note https://note.com/kikuiyashin

 

  詩集『ぼくはまなざしで自分を研いだ』について
喜久井さんは八歳から不登校になり、十代のほとんどを自宅で過ごしてきました。
「ひきこもり」状態の生活は孤独で、家族以外との会話はほとんどなかったと言います。
しかし悩みを書き綴った日記が心の支えとなり、現在の活動力の源になりました。

喜久井さんの詩には、一般的な社会で生きられなかった悲しさや悔しさが込められており、マイノリティならではの視点があります。
孤独を込めた言葉の結晶は、生きづらさを持つ読者の共感を呼ぶのではないでしょうか。

現在喜久井さんはライターをしており、これまで「ひきこもり新聞」、「ひきポス」、「不登校新聞」などで活動してきました。
いずれも不登校・ひきこもりの当事者手記です。
親御さんや支援者にとっては、当事者の心理がわかる一冊になるかもしれません。

 

作品のご紹介
今回は詩集の中から、特別に「逆上がりのように」と「まなざし」という詩二編を公開します。

 

逆上がりのように

逆上がりのように
人間ができなかった
下手くそな版画とおなじく
傷ついていびつにできあがった
こいつは優秀じゃなくて
たぶんいい子でもなくて
それで失格になるってことは
前からよく聞いていたけど
ここまで てんさく されるだなんて
右にいた子は二重跳びのように
子供でいるのが上手かった
前にいた子は自転車のように
自分に乗って遠くへ行けた
風景は逆さまにゆうれ
ゆれ
どうすれば軽々とできた
こんなに他人でできているものを
あれほど硬いものにつかまされなければ
僕は僕を歩けただろう
僕は僕を走れただろう
平たい一人分の道を
ただの足によって
訂正される漢字みたいに
こいつには朱色がまわあり
まわり

それがわかればわかるほど
僕は努力して人間に進ん

けど
人間の方が
僕から遠ざかっていってしまった。

 

まなざし

とおい彼方を見たのと
おなじまなざしで見られたら
つらぬかれてしまうかもしれない
名札をピンで刺すときと
おなじまなざしで見られたら
刺さってしまうかもしれない
そのような目で人から見られ
そのような目で人を見てきた
割れた食器片を見たのと
おなじまなざしで見ていたら
傷つけた仲があったかもしれない
まなざしを閉じたままでいたなら
さしだされていた手も
見のがしてきたのかもしれない
そのような目をしたつきあいがあって
そのような目をした別れがあった
冷えたからだに毛布をかける目で
見られたことがあったなら
夜中に目覚めないのかもしれない
まるいおにぎりをつくるのと
おなじまなざしで見られていたら
ほかほかで
しかもまるまったのかもしれない
ガラス片のつぶを掃く目をして
一日を終え
また
そのような目をするあしたがやってくる
せめて自分を痛ませないように
いまはしばらく
目をとじている
たくさんのまなざしの破片が
よみがえる薄絹の一日を
これよりも傷つけはしないように

 

 ご提供について
子ども・若者のための居場所(オルタナティブ・スクールやひきこもり当事者のための活動団体など)を運営している方からのご希望があれば、詩集一冊を無料で配送いたします。
連絡先 natanaeru87@gmail.com
配送条件・購入方法など、詳細は以下のページに記載しております。なお、条件によってはお渡しできない場合がございますのでご了承ください。
喜久井ヤシン note https://note.com/kikuiyashin

著者 喜久井ヤシン(きくい やしん)
1987年生まれ。8歳から学校へ行かなくなり、20代の半ばまで断続的な「ひきこもり」を経験している。2015年シューレ大学修了。現在は『ひきポス』『不登校新聞』などでライター活動をおこなっている。2019年NHK『ハートネットTV』出演。同年『引きこもり文学大賞』入賞。ツイッター https://twitter.com/ShinyaKikui