140円で心を癒やす旅


11434a(イラスト:いぐるらいず)

出来るだけお金を使わないで心を癒す方法

大阪在住のさえきたいちと申します。僕は物心ついた時対人恐怖になり、学校へ行くのがしんどくなり引きこもりました。

気分転換に青春18きっぷで景色を見にいって心を落ち着けたことからだんだん外に出られるようになり、現在は東京など各地の集まりに出かけ、その縁でひきこもり新聞に関わるようになりました。

僕は仕事をしても心がボロボロになって続かないので、できるだけお金を使わずに心を癒やす方法をいつも考えています。電車で旅することもその一つです。

ひきこもり当事者にとって電車に乗るのはハードルが高いように感じられるかもしれませんが、僕の経験では勉強をサボって電車で景色を眺めたことで、気持ちが落ち着いて状況が好転したことがあったので、(まずは家の近くの路線などで)試してみてはどうでしょうか。

たった140円で

実はJRの場合、いくつかの大都市(東京、大阪、仙台、新潟、福岡)には「近郊区間」というものがあります。

その区間内であれば、ルートが重ならない限り(同じ所を二度通らない限り)、最も安いルートの運賃で乗り降りできるルールがあり、その近郊区間に含まれる場所であれば、ルールに則って周遊することが可能です。これを「大回り乗車」といい、東京の場合であれば、東京駅から房総半島を一周して同じ駅を通らずにその日のうちに秋葉原駅で降りれば、なんとたった140円で済んでしまうのです!(ただし、駅から外には出られませんので食料はエキナカなどで調達することになりますが)

何よりこういう旅で良いのは、海や山、田園風景を望めるというだけでなく、そういう地域では乗ってる人が少ないので、状況によっては貸し切り状態のような、プライベートに近い空間が得られるということです。

都心では人目が気になって電車に乗るのが怖くても、例えば房総半島を回ってる間であれば、人が少なくて落ち着いた空間と時間が得られるのではないかと思います。

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安心できる状況を作る

精神的にしんどい時は、安心できる状況を作ることが一番です。親がしんどい場合は、親の目を気にしなくてもいい場所を見つけるとか、人の目が怖い場合は人を気にしなくてもいい場所を探すとか、それもしんどい時は家の中で自分の世界に浸れる場所を作るのも良いと思います。

そういった場所を探すのに、電車で遠出するとお金がかかります。僕自身も使えるお金が限られてるので、出来るだけお金を使わずにリラックス出来ることを続けています。

その一つがこの「大回り乗車」です。いつかひきこもり大学の一授業として「房総半島一周ツアー」をやってみたいですね。

 

(文・さえきたいち)
物心ついた時から強い対人不安に苦しむ。大学を中退し、22歳から父の勧めもありフリースペースに通うようになる。現在は39歳無職。自称ひきこもり外交官としてひきこもり関係のイベントを行脚中。