「ひきこもりは連帯すれば一発逆転できる」斎藤環さんインタビュー


個人をどのような状況下にあっても尊重しましょうという思想

しかし残念ながら今の社会は、相模原事件のように弱者(犯人)が弱者(障害者)を叩くという地獄のよう構図がありますね。自分より下を見ることでしか自分を維持できないみたいなね。

役に立たないやつは死ね、みたいな発想が、弱者の中にも階層を作ってしまうという風な発想につながっちゃってると思うので、どんなに難しくても個人を尊重するというところに戻らないと連帯もできないんじゃないかと思いますね。

だから相当難しいと思いますけど、見本を示すという意味ではひきこもり新聞が、個人をどのような状況下にあっても尊重しましょうという思想に行ければいいと僕は思います。

それに、近所は出れないけど遠くはいけるという人はいるじゃないですか。勝山実さんとかやってるけど、和歌山とかに拠点作って活動していたりしてますよね。近所の目を気にせずにのびのび過ごせる場所があったりしてもいい。全国組織だと交流が全国規模で出来ますね。

それにちゃんと全国規模の当事者団体が機能していると、オーソライズ(公認)と言って、この団体はまともである、この団体はよろしく無いみたいなね、あるい程度判断も出来るかもしれないじゃないですか。
そういう意味じゃ全国規模の組織があったほうが、強いというか、そういった意味で信頼性が置かれる可能性があると思いますけどね。

──なんで今さら『全国ひきこもり当事者連合会』を作る必要があるのかという声もある。

僕が知っている範囲で言うと、ひきこもっている人がひきこもりを軽蔑してしまうことがあって、連帯したがらない。

極論かもしれないけど、相模事件があったじゃないですか。障害者は生きる価値がないみたいな。

あれは、人の役に立たない人は生きる価値がないという日本独特の価値観。
欧米においては個人主義。個人主義の社会っていうのは、人の生きる権利や価値は天から与えられるものだから、障害があろうとなかろうとあるんだって考えるのがデフォルト。
日本の場合は村社会だから、村の役に立たない人は価値がないという風に考えやすい社会です。

なので、障害に価値がないという考えと、ひきこもっている人は価値がないという考えは地続きなのでそこは本当に抜け出してほしい。

何もしてなくても自分に価値があるというところを堂々と主張してほしいんだけど、ひきこもっている時は余裕がないのでそこまで考えられない。

絶対批判されるので、批判に負けないで。

ひきこもっている人たちは、妙に世間的な価値になびいてしまっていて、そっちの目から自分を見てしまうので、世間に合わない俺が悪いみたいに思いがちなところがあるんですよ。
そんな風に思う必要はないと僕は思うんだけど。考え方に余裕がない時には悪循環に陥りやすいってのはありますよね。

どうしてもひきこもり新聞のようなものを出すと、それはそれでやっかむ人が出てくる。比較的元気に見える訳ですから。当事者じゃないじゃないか、と言いたい人も出てくるだろうと思います。

どうしても批判も覚悟でやる必要があって、絶対批判されるので、批判に負けないで欲しいということにつきますね。社会からも、当事者からも、絶対叩かれます。これは予めわかっているので、それは折り込み済みで、したたかにやってほしいです。

──当事者から観て優れた団体を表彰したいと思ってる。その時に斎藤環賞みたいなのを作りたい

ははは(笑)それはまずいって。絶対まずい。僕を医療化促進側と思っている人が一定数いるので、それは物凄い叩かれる。炎上案件だからそれはやめて。

 


3 Comments

  1. 門田 成弘

    長期ひきこもっている息子を持つ父親として、斎藤環さんのインタビューの話はよくわかります。
    人前に出ていけない状態のひきこもった人間をどういう支援すればいいのか。やはり、家族自身にひきこもった経験がないと、家族だけでは非常に困難だと思う。それは当事者と家族の会話
    仕方そのものが暗中模索状態で共に暮らしていかねばならない、ということだ。
    それはひきこもり当事者は家族とコミニケーションを意欲的にとろうと思っていないのではないのかという疑念があるからだ。そういう意味ではひきこもり当事者の連帯の場が身近にあれば
    いいのでは、と考えるのだが。

  2. 柴田 美香

    25歳の息子が引きこもり、半年が経つ母子家庭です。
    何とか理解しようと、斎藤先生の本に出会いました。
    介護職からパチンコ店に転職し、職場で何かあったらしく弁償しろと言われ、半年車の工場で派遣社員として住込みながら働いて大金を払い終えてから、初めてこの件について話してくれました。
    それが、8月の末頃です。
    その後、新しい仕事を探すと言っていたのですが、段々家族とも会話せず、昼夜逆転し、ゲームを23時から始めて夜中起きている状態です。
    ご飯も部屋で食べるのですが、食べ終わるときちんとさげてくれます。
    ただ、歯磨きは半年しません。散髪も行きません。お風呂も週1か2回入るだけで、タバコは吸います。
    アパートなので、外で吸う時とタバコを買いに行く時だけ外出し、友達とも一切会わない状態です。
    ただ、ゲームはスマホでメールのやり取りしながら、殺人ゲームみたいのを音を低くしてやっています。
    タバコ代は、80歳になる祖母が五千円又は一万円を、髪切りに行きなさいと話し渡していたらしく、タバコやゲームの課金代にしているようです。
    お金の要求はした事もありません。
    ただ、話しかけると、うるさい。と怒鳴り身体を震わせながら、頭を抱えて自分を叩きます。
    また、壁を叩いたり、物を投げ、ゲームのコントローラーを壊したり。と暴力を振るいます。
    高専の受験に失敗し希望校に行けず、三男の息子から中学生浪人させてくれないか。と言われた時、私は、私立の進学高校に行っても、一級建築士になれるから浪人させるお金が無いから。と、無理やり行かせた過去があります。
    しかし、一年生の夏休みに入ってから学校で虐められ、根も葉もない噂を言いふらされているから、行きたくない。
    と、一学期が終わってから初めて話してくれました。
    学校に行き、先生に話しても拉致があかず、結局退学してしまいました。
    その時、何カ月も閉じこもりましたが、中学生の時の友人とは交流があったので、ニートだったと思います。
    しかし、仕事を探し、きちんと働くようになり、安心していました。
    ただ、学校を退学する迄の間は、大声で怒鳴り、壁に穴を開けたりと自暴自棄だった過去があります。
    父親が、かっとなると、物を投げたり、壁やガラスを壊し、終いには止めにかかる私に暴力を振るう人だったので、子供に悪影響だと警察の方に助言して頂き、裁判で離婚しております。
    1歳7ヶ月から一緒に暮らしていなかったのですが、不思議なことに、三男の息子が暴力を振るう所や、性格が一番似ています。
    それが、25歳になり引きこもりになっている現在、どうしたらよいものか接し方が分からないので、市役所に相談しました。
    少しずつ、引きこもりについて理解できるようになり、本を読んだり、ネットで調べたりして、斎藤先生にたどり着きました。
    私が、小さい時に生活するのがやっとで、きちんと3人の息子の話しを聞いてやれず、厳し過ぎて甘えさせてやれなかったのも確かです。
    しかし、三男だけに対し、変な所で甘やかし過ぎていた部分があったから、このようになってしまったのか。
    と悩み続けて数ヶ月が経ちました。
    息子にもう一度、元気になって欲しいのです。
    私は、息子抜きでカウンセリングを受けたいのですが、どうしたらよいのでしょうか。

  3. 柴田 美香

    先生のお話を拝読させて頂き、何としても、息子の元気な顔を見たい。
    引きこもりを更生させる施設は行かせたくない。と思いました。
    とても参考になりました。