「ひきこもりは連帯すれば一発逆転できる」斎藤環さんインタビュー


環先生(立ち)web

──あの報道時、ほとんどの当事者は反発しましたが、中にはああいう団体によって救われたという意見がありました。社会的意義はゼロだと思いますか?

親御さんの大半はうつ状態で判断力が低下している

暴力的支援は必要ないです。家で暴れてる人にもやり方があって僕はちゃんとネットに書いてます。十分に対応できますからいらないです。

いらないけど、手っ取り早い解決を求める親にとっては救世主に見える。
これが悪どいのは、ひきこもった子を持った親御さんの大半はうつ状態。

私が統計でアンケート調査をした時に、うつ病スコアをとったんですよ。K6でとったんですが、13点以上はうつ病ハイリスク群で、親御さんの平均が12.9なんですよね。
ぎりぎりなんですよ。つまり親御さんも煮詰まっていてうつ状態。判断力が働いてない。判断力が低下していて、もう勘弁してほしいという気持ちで、すがっちゃうんです。

どんなにこちらがアドバイスしても聞いてくれないのは、それが原因だったということがやっとわかりましたね。

だから目につくところにいるとすがっちゃうから、目につくところに出てくるな、とやったわけです。気力がなくて、ネットですら調べませんからね。

失敗事例が目も当てられない

また当事者ですら賛成するっていう問題もあります。ああいう支援は一部の人には有効なんです。それは事実。僕が反対する理由は、有効性はあるかもしれないが、失敗事例が目も当てられないから。

ああいう支援でダメだった人は一生親を怨むだろうし、ますます人間不信に陥って、もう手の届かないところに行ってしまう可能性があります。
そういうものを作り出しながら、暴力的支援団体の経営者が「なんとかできる人は5割ぐらいですかね」という発言をしています。

5割取りこぼすだけでも大変なんだけど、5割は救ってしまっている。やっぱりそれはまずい。治療というのは、全例は救えないことはわかっているのですから、だめならだめなりになんとか救済策を考えながらやっていく必要がありますが、そこは無視していますよね。
それは非常にまずいです。

ある意味洗脳

有効ではないとは言いません。戸塚ヨットスクールでも治る人はいるんだから。逆にそれは洗脳みたいな感じで、体罰で偉くなったスポーツ選手みたいなものです。成功バイアスと言って俺が成功したのは体罰のおかげ、みたいになっちゃうんですよ。それはある意味洗脳だから。

だからひきこもりから立ち治ったのは「伊藤スクールのおかげです」みたいになりやすいので危険なんです。支援者の中にも元ひきこもり経験者で、俺もなれたんだからお前もがんばれみたいな人がでてくるわけだ。
そういう人が出てきちゃうのはしょうがないことなんですよね。そういう立ち直りは間違った立ち直りだとする権利はないはずだから、それはその人なりに生きていけばいいと思います。こういう人は支援者に向かないと思うんだけど、支援の世界にそういう人が来るとちょっと困ったことになるかなと思っています。気合の入りすぎた人ですね。

頑張れないやつは叱咤激励しちゃうんですよね。むしろ経験者の特性を活かして、きつかった時に照準して共感的にやってほしいんですけどね。

──宿泊施設型の更生施設の利用は家族関係がこじれていた場合に有効だと思いますか。

全然よくならない。帰ってきたら元の木阿弥なんだから。隔離して、働くようにしたって、家に戻ったら元に戻っちゃう人は一杯いると思うんですけど、そういう人は報道しないですよね。
成功事例は多く報道するけど。

ただ、本人が改善すると、親も反省するという人も一定数いるんですよ。そういうケースは確かに家族関係が良くなることがたまにある。でもそれは珍しいケースで多くはない。美談になりやすいケースです。

NEXT⇛ ひきこもり新聞について


3 Comments

  1. 門田 成弘

    長期ひきこもっている息子を持つ父親として、斎藤環さんのインタビューの話はよくわかります。
    人前に出ていけない状態のひきこもった人間をどういう支援すればいいのか。やはり、家族自身にひきこもった経験がないと、家族だけでは非常に困難だと思う。それは当事者と家族の会話
    仕方そのものが暗中模索状態で共に暮らしていかねばならない、ということだ。
    それはひきこもり当事者は家族とコミニケーションを意欲的にとろうと思っていないのではないのかという疑念があるからだ。そういう意味ではひきこもり当事者の連帯の場が身近にあれば
    いいのでは、と考えるのだが。

  2. 柴田 美香

    25歳の息子が引きこもり、半年が経つ母子家庭です。
    何とか理解しようと、斎藤先生の本に出会いました。
    介護職からパチンコ店に転職し、職場で何かあったらしく弁償しろと言われ、半年車の工場で派遣社員として住込みながら働いて大金を払い終えてから、初めてこの件について話してくれました。
    それが、8月の末頃です。
    その後、新しい仕事を探すと言っていたのですが、段々家族とも会話せず、昼夜逆転し、ゲームを23時から始めて夜中起きている状態です。
    ご飯も部屋で食べるのですが、食べ終わるときちんとさげてくれます。
    ただ、歯磨きは半年しません。散髪も行きません。お風呂も週1か2回入るだけで、タバコは吸います。
    アパートなので、外で吸う時とタバコを買いに行く時だけ外出し、友達とも一切会わない状態です。
    ただ、ゲームはスマホでメールのやり取りしながら、殺人ゲームみたいのを音を低くしてやっています。
    タバコ代は、80歳になる祖母が五千円又は一万円を、髪切りに行きなさいと話し渡していたらしく、タバコやゲームの課金代にしているようです。
    お金の要求はした事もありません。
    ただ、話しかけると、うるさい。と怒鳴り身体を震わせながら、頭を抱えて自分を叩きます。
    また、壁を叩いたり、物を投げ、ゲームのコントローラーを壊したり。と暴力を振るいます。
    高専の受験に失敗し希望校に行けず、三男の息子から中学生浪人させてくれないか。と言われた時、私は、私立の進学高校に行っても、一級建築士になれるから浪人させるお金が無いから。と、無理やり行かせた過去があります。
    しかし、一年生の夏休みに入ってから学校で虐められ、根も葉もない噂を言いふらされているから、行きたくない。
    と、一学期が終わってから初めて話してくれました。
    学校に行き、先生に話しても拉致があかず、結局退学してしまいました。
    その時、何カ月も閉じこもりましたが、中学生の時の友人とは交流があったので、ニートだったと思います。
    しかし、仕事を探し、きちんと働くようになり、安心していました。
    ただ、学校を退学する迄の間は、大声で怒鳴り、壁に穴を開けたりと自暴自棄だった過去があります。
    父親が、かっとなると、物を投げたり、壁やガラスを壊し、終いには止めにかかる私に暴力を振るう人だったので、子供に悪影響だと警察の方に助言して頂き、裁判で離婚しております。
    1歳7ヶ月から一緒に暮らしていなかったのですが、不思議なことに、三男の息子が暴力を振るう所や、性格が一番似ています。
    それが、25歳になり引きこもりになっている現在、どうしたらよいものか接し方が分からないので、市役所に相談しました。
    少しずつ、引きこもりについて理解できるようになり、本を読んだり、ネットで調べたりして、斎藤先生にたどり着きました。
    私が、小さい時に生活するのがやっとで、きちんと3人の息子の話しを聞いてやれず、厳し過ぎて甘えさせてやれなかったのも確かです。
    しかし、三男だけに対し、変な所で甘やかし過ぎていた部分があったから、このようになってしまったのか。
    と悩み続けて数ヶ月が経ちました。
    息子にもう一度、元気になって欲しいのです。
    私は、息子抜きでカウンセリングを受けたいのですが、どうしたらよいのでしょうか。

  3. 柴田 美香

    先生のお話を拝読させて頂き、何としても、息子の元気な顔を見たい。
    引きこもりを更生させる施設は行かせたくない。と思いました。
    とても参考になりました。