「ひきこもりは連帯すれば一発逆転できる」斎藤環さんインタビュー


 

暴力的支援団体について思うこと

──(木村)全ひき連を作ろうと思ったきっかけはワンステップ伊藤学校の報道です。
そして、ひきこもり新聞を作ろうと思ったきっかけは、ひきこもりを犯罪者扱いのように報道する、マスコミの偏向的報道が問題だと思ったからです。
斎藤先生は、長田百合子や戸塚ヨットスクールのような暴力的支援団体の報道がこれまであったのに、なぜ、伊藤学校の報道の後に記者会見を開いたのですか?

これは反省です。長田百合子氏の時に、テレビで対話もしていたので、ちゃんと止めるべきだったと。

それはおかしいともっと強く言えばよかった。もちろんその場では議論になったし、賛成できないと言ったけれども、ちゃんと抗議できていませんでした。
長田塾の訴訟が起こったり、アイメンタルスクールで殺人が起こったり、それらを防ぎきれなかったという強い後悔があります。

当時はさすがに反省もあったみたいで、しばらくはああいう報道は鳴りを潜めていたのですが、10年たってみたら、全く同じ構図の報道がなされていました。ひきこもりという、けしからん連中がいて、その悪を討伐する正義の支援組織がある。時には暴力も辞さないその組織が、正義の力をふるって悪のひきこもりを正すのだ、みたいな流れ。

そういうアングルをまた作っちゃっているので、メディアは全然反省していないという怒りがあって。だから反省と怒りですね。

テレビは人権に配慮した報道をしてみたらどうか

だから、記者会見をした目的はワンステップ伊藤学校をつぶすことじゃなくて、メディアの在り方、いやしくもOECD加盟国のメディアだったら、もうちょっと人権に配慮した報道をしてみたらどうかと言いたかったわけですけど。

日本のテレビメディアっていうのは視聴者をなめています。つまり、これぐらいの場面を作ればみんな喜ぶだろうという意識でやっています。ああいった勧善懲悪のアングルを作り、分かりやすい悪者を立てて、現場のライブシーンを出せば喜んでみるだろうという意図が透けて見えます。

こういった卑しい発想を根絶しないといけません。こういう放送をする度に抗議されると面倒ですから。こうした報道は根絶できるだろうという気持ちでやったわけです。幸い今のところ功を奏したのかなと思っています。

あの手の報道は最近聞かれませんし。残念だけどああいう機関は水面下で残るんですよ。
それこそやくざみたいなものでアングラに残っていくんです。

でも、それは裏家業なので裏家業の人にはちゃんと裏口にまわってもらうべき。裏家業の人がヒーローみたいになるのは絶対におかしいので。裏家業の分際をわきまえていただきましょうということですね。

NEXT⇛ 暴力的支援団体の社会的意義はあるか?


3 Comments

  1. 門田 成弘

    長期ひきこもっている息子を持つ父親として、斎藤環さんのインタビューの話はよくわかります。
    人前に出ていけない状態のひきこもった人間をどういう支援すればいいのか。やはり、家族自身にひきこもった経験がないと、家族だけでは非常に困難だと思う。それは当事者と家族の会話
    仕方そのものが暗中模索状態で共に暮らしていかねばならない、ということだ。
    それはひきこもり当事者は家族とコミニケーションを意欲的にとろうと思っていないのではないのかという疑念があるからだ。そういう意味ではひきこもり当事者の連帯の場が身近にあれば
    いいのでは、と考えるのだが。

  2. 柴田 美香

    25歳の息子が引きこもり、半年が経つ母子家庭です。
    何とか理解しようと、斎藤先生の本に出会いました。
    介護職からパチンコ店に転職し、職場で何かあったらしく弁償しろと言われ、半年車の工場で派遣社員として住込みながら働いて大金を払い終えてから、初めてこの件について話してくれました。
    それが、8月の末頃です。
    その後、新しい仕事を探すと言っていたのですが、段々家族とも会話せず、昼夜逆転し、ゲームを23時から始めて夜中起きている状態です。
    ご飯も部屋で食べるのですが、食べ終わるときちんとさげてくれます。
    ただ、歯磨きは半年しません。散髪も行きません。お風呂も週1か2回入るだけで、タバコは吸います。
    アパートなので、外で吸う時とタバコを買いに行く時だけ外出し、友達とも一切会わない状態です。
    ただ、ゲームはスマホでメールのやり取りしながら、殺人ゲームみたいのを音を低くしてやっています。
    タバコ代は、80歳になる祖母が五千円又は一万円を、髪切りに行きなさいと話し渡していたらしく、タバコやゲームの課金代にしているようです。
    お金の要求はした事もありません。
    ただ、話しかけると、うるさい。と怒鳴り身体を震わせながら、頭を抱えて自分を叩きます。
    また、壁を叩いたり、物を投げ、ゲームのコントローラーを壊したり。と暴力を振るいます。
    高専の受験に失敗し希望校に行けず、三男の息子から中学生浪人させてくれないか。と言われた時、私は、私立の進学高校に行っても、一級建築士になれるから浪人させるお金が無いから。と、無理やり行かせた過去があります。
    しかし、一年生の夏休みに入ってから学校で虐められ、根も葉もない噂を言いふらされているから、行きたくない。
    と、一学期が終わってから初めて話してくれました。
    学校に行き、先生に話しても拉致があかず、結局退学してしまいました。
    その時、何カ月も閉じこもりましたが、中学生の時の友人とは交流があったので、ニートだったと思います。
    しかし、仕事を探し、きちんと働くようになり、安心していました。
    ただ、学校を退学する迄の間は、大声で怒鳴り、壁に穴を開けたりと自暴自棄だった過去があります。
    父親が、かっとなると、物を投げたり、壁やガラスを壊し、終いには止めにかかる私に暴力を振るう人だったので、子供に悪影響だと警察の方に助言して頂き、裁判で離婚しております。
    1歳7ヶ月から一緒に暮らしていなかったのですが、不思議なことに、三男の息子が暴力を振るう所や、性格が一番似ています。
    それが、25歳になり引きこもりになっている現在、どうしたらよいものか接し方が分からないので、市役所に相談しました。
    少しずつ、引きこもりについて理解できるようになり、本を読んだり、ネットで調べたりして、斎藤先生にたどり着きました。
    私が、小さい時に生活するのがやっとで、きちんと3人の息子の話しを聞いてやれず、厳し過ぎて甘えさせてやれなかったのも確かです。
    しかし、三男だけに対し、変な所で甘やかし過ぎていた部分があったから、このようになってしまったのか。
    と悩み続けて数ヶ月が経ちました。
    息子にもう一度、元気になって欲しいのです。
    私は、息子抜きでカウンセリングを受けたいのですが、どうしたらよいのでしょうか。

  3. 柴田 美香

    先生のお話を拝読させて頂き、何としても、息子の元気な顔を見たい。
    引きこもりを更生させる施設は行かせたくない。と思いました。
    とても参考になりました。