「施設と警察と親に殺される前に、死を選ぶしか逃れる方法は無い…」被害者Aさんの発言 引き出し業者被害 記者会見【全文】


3ヶ月で570万支払い、軟禁や放置

もともと健康で働けたり、夢を持って一人で暮らせていた私を、アパートやマンションの一室に連れて行き、軟禁や放置をして、3ヶ月で570万という高額な契約料を払わせたのです。

カリキュラムやプログラムがあるわけでも無く、カウンセリングなどの専門知識を持ったスタッフすら付いていませんでした。
私はひきこもりではありませんでしたが、実際に男子寮でひきこもり当事者の方と暮らしました。寝食を共にし、たくさん話をしました。

ビジネスとして引き出し、移送行為をしている業者は「ひきこもり、家庭内暴力、ニート、精神障害者」という言葉で人をくくって、このような業務をしているのだと思いますが、百人いたら百様なのです。
支援も本当は百様のはずです。間違った正義感や、使命感の暴走による一方的な支援は暴力ですらあり、最悪、人の命をも奪います。
「お国のために」「あなたのために」「あなたが心配だから」「あなたの事を助けたいから」
入居中、そういったセリフを彼らはよく使っていました。

孤立して悩む人につけ入る

誰に助けを求めて良いのか分からない孤立感。ニートやひきこもり当事者を持つ、家族の気持ちは計り知れません。世間体を考えると、家族の悩みはなかなか他人に打ち明けられず、閉塞感と孤立感がますます強くなり、個々がより一層、重く抱え込むことになります。

私の母も、誰かに相談することが出来ない性格でした。このままでは家族全員が疲れ切って共倒れ、一家離散になってしまうのではないか。その前に何とかしなければと焦る家族の気持ち。

そのような必死さを利用して、施設の人間は天使の顔をして「未来を買いましょう!」などと、ささやきました。母が初めて上げた心の悲鳴だったのに・・・。

相談した相手が、わたしが被害に逢ったそのような施設であったことが、悔しくて悲しいのです。また一度壊れた親子関係は、そう簡単には戻りません。

ビジネスや金儲けではない、当事者や家族の気持ちに寄りそった、本当のケアをしてくれる公的な機関、相談窓口の充実が必要だと感じます。現状、自立支援をうたう施設や団体は数多く存在しています。施設の実態、支援内容、利用者の声などを、公正な目線で、第三者がチェックをする機能の必要性も、私は強く感じています。

最後に、私が望む支援のあり方をお話させていただきます。まず一番大事なのは「一体、誰に対しての支援なのか?」ということを、今一度皆さんに考えてほしいのです。
家族への支援やケアというのも、もちろん大切なのですが、家族や支援者の一方的な行為になってはいないか、慎重に見極めなければなりません。一方的な押し付けや間違ったアプローチでは、当事者は決して救われないのです。
そもそも支援を求めているのか?求めているとしたら、どういう支援なのか?本当は人それぞれ違うはずなのです。

一番大切なのは、当事者の声をしっかり聴く。声がしっかり届くことです。また、報復の恐怖やフラッシュバックなどに脅え、こうした被害の声が上げづらく、被害者が泣き寝入りをする、そこにまた業者が付け込むという悪循環が、しばしば見られます。

また、マスコミが施設の職員や、満足している利用者の声だけを拾って流してしまうと、新たな被害者を生んでしまう事にもなりかねません。

国としてひきこもりやニートの問題に真剣に取り組むのなら、尚更このような悪質な支援団体の実態を、把握しながら放置しないで下さい。国内で平然と起こっている、若者や弱者の意志を無視した一方的な暴力的支援、人権の蹂躙に目を向けて下さい。

多様な人間性や生き方を認めてくれる社会を

子供にも誰にでも人権はあるのです。親、兄弟、親戚、すべて失い、心に一生癒えない傷を負い、働くどころか生きることが困難になる人を増やしているだけです。
まずは施設の被害者や、助けが必要な当事者の声が届くシステム作り、支援のガイドラインの作成と徹底、警察や行政の人権意識の向上を望みます。

多様な人間性や生き方を認めてくれる、夢を持つ人が生きやすくなる。日本がそういう国になることを切に願います。

最後になりましたが、今現在も私のいた施設には、入居者が複数いると聞きます。暴力や精神的に苦しんでいる方がいるのではないかと思うと、夜も眠れず、心の休まる時がありません。
警察も助けてくれない私たちには、繋がり合える場所が必要なのです。ご静聴ありがとうございました。

質疑応答

ひきこもり新聞:ひきこもりでも無いのに、業者に連れて行かれたとのことですが、2時間の最初の電話の相談、3時間半かけて現地に向かい、9時間の面談。そのどこかでAさんは、ひきこもりと自認する瞬間があったのでしょうか?

望月弁護士:そこはお母さんと業者との話で、Aさんご自身が体験したことでは無いので説明は難しいのですが、私がお母さんから聞き取っている内容からすると、最後までAさんは、ひきこもりとは自認しておりません 。
お母さんが業者に「娘さんの未来を買いましょう。このままでは大変なことになりますよ」と危機感を煽られて「解決するためには、私たちの支援が必要なのです」と言われた話でしか無いのです。

質問:「情報共有ネット」に相談を寄せた場合、具体的にどういう対応を想定されていますか。

被害者Aさん:私は主催や幹部では無いのですが、私自身がこういう被害にあったとき、被害者の会がまったく無いことで非常に困りました。
刑事事件として、またマスコミさんに色々伝えたくて、マスコミ各社にFAXやメールを送ったのですが、全くダメでした。そういう時期に弁護士さんと通じたことで、池上さんや斎藤環さんと通じることができました。
また「ひきこもりフューチャーセッション・庵」という所で、色々な被害者の方とお会いした時、私は初めて救われたと言いますか、こういう事ってあったんだ、こういうビジネスなどの被害者の方がこんなにいる。声は上げられないけど、一人じゃないと感じて、その夜は眠れたんです。

そういう意味でも、まだ形でしか無いですが、少しでもその人の精神が良くなるなら、私自身もお話をしたいですね。今後の活動を、色々これから考えて行きたいと思っております。

望月弁護士
:私の方から補足しますと、こういう被害があった時に「被害だ」と声を上げて、すぐに裁判まで行ける例は、本当に珍しいと思います。
Aさんの例は、本当に特異だと思います。この何十年でも、ひきこもり支援業者が裁判の相手になった例は、本当に数えるほどしか無いのです。

そして情報共有は2つの意味があって、1つはまず実態把握。どういう被害があるかの情報を共有し、集めましょうというのが一点と、もう1つは語ることによって、また他の人の話を聴くことで救われるという意味でも、共有が必要という点です。

先回りして助けを求めさせない


ひきこもり新聞

Aさんが施設に入っている時に、他の入居者の方はどのような気持ちだったのかを、お話いただければと思います。

被害者Aさん:柏の賃貸アパートの時は完全に一人で、その後、越谷の男子寮に行った時に初めて、後から入居した方にお会いしたのですが、事情を聴くと、やはり同意を得ずにいきなり突入された。それを業者は「決行日」「実行日」と言ってますけれど、本人に取っては本当に恐ろしいんですね。
その方はひきこもりの当事者だったのですけど、そうであっても無くても、そんなことされて普通にその後トラウマにならない人は、私はいないと思いますし、その後の寮生活での精神状態というのも、決して良くなっていたわけではないと私は思っていました。

望月弁護士:彼らは色々な所の心の支えを、一個一個潰していくわけです。
Aさんの場合でしたら、ご両親、姉、おじさん、おばさん、あとは警察、色々とあると思うんですけど、例えばご両親に関しては、必ず本人からSOSが来るので「そういう甘えた物が来ても、それは絶対に受け付けないで下さい」と言った形で閉ざしておく。

そしておじさん、おばさんなどに対しても「本人からSOSの連絡が来るかも知れないけれども、それは私たちが安心してお任せしてる施設からなので、本人が何を言ってきても、聞かないで下さい」と、先回りして連絡させるように、施設から両親に指示します。
このように彼女の心の拠り所となるルートを、一つ一つ奪っておくんですね。
そこは大変に巧妙なやり方をしてるな、と思いました。

以上

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