【当事者手記】10年ひきこもり、5年働き…そしてまた


恐怖の街を出て東京へ

25歳の時に東京へ行った。でもこの経歴だからアルバイトの面接も落ち、部屋で寝ているだけの日が続いた。
ハローワークを通してもヤクザの事務所のような所に入ってしまい、1ヶ月で辞めた。街中の小さな事務所にふらりと入ったら、面接を受け付けていた。
そこは誰でも採用する所だった。最初は、ほぼ座ってるだけだったけど、指導者の罵倒はひどかった。

でも、自分で手に入れたお金はやはり嬉しい。コンビニのお弁当も、本も買える。
職場のイベントにも入れてくれるようになり、1年ぐらいで「パソコンが得意そう」と、簡単な事務の仕事を任せてもらえた。(「彼はすごく出来ないけど、何か役割を与えたい」という事だったらしい。)
家でパソコンを使ってただけだけど「ミスがない」と言われて、アルバイト代を2万ぐらい加算してくれたのが嬉しかった。

でも正社員には全然なれず、ギリギリの生活が続く。どう頑張っても「人格的にね…」と言われた。
ある日、セクハラをするお客さんが来て、毎日AVを仕事中に見せられた。職場に怒りをぶつけたら「大手でやってた人が来るから、その人に事務は任せるね」と仕事を減らされた。「あ、僕はそんな程度なんだ」
嫌われてた50代の社員にインチキな事務をしてるように言われ、職場に「辞めるのかパートになるのか、どちらかに決めなさい」とはっきり言われた。その日のうちに退職届を出した。

全てをかけて「普通」になろうとしていた4年半、結局なれなかった。
数ヶ月後、就職支援を使い「もう、ああいう職場はダメなんです」と強く伝えたが「10社以上と面接し、10年間はアルバイトをしてたと書いて応募しなさい」と言われ、こちらの希望は全く取り合われず、もっと酷い職場に入ることになった。

そこでは「どう?彼は仕事に慣れてないだけ?」「いや、そんなレベルじゃない。あれはそういう段階じゃないよ」と聞こえた。必死にやってきても、何も変わってなかった…。
時は過ぎていく。ひきこもっていた時のように。あの頃は、1年がただ静かに部屋の中で過ぎていた。でも働いていても、何も見えないまま過ぎていく。

ほぼ毎日「全然覚えてない!社会人としてやばいよ!」と怒鳴られ、心から震え上がっていた。
苦痛を埋め合わせるため、仕事上がりに1時間かけて新宿まで行き、喫茶店の閉店ギリギリでビールを飲んでいた。僕は30歳になっていた。

境遇を変えたくて、上位資格に挑戦。全ての時間を使ってギリギリの点数で合格。業界10年の上司達が諦めている資格を、5年で取れた。それでも何も変わらない。
むしろ「資格があるならモットデキルダロ!」と、余計に風当たりは厳しくなった…。

さらに境遇を変えたくて、心療内科に行った。僕が病気なら、治療してくださいと。女医は「あなた10年もひきこもってたんでしょ?ここで休んだらねぇ…」とバカにして来たから、この医師を徹底的に拒否した。
次の医師は「不安神経症」「抑うつ症状」「就労不能」と診断した。そして休職し、そのまま退職する。
次へ≫